国立小劇場での五月文楽公演千穐楽の第二部へ足を運ぶ。
演目は、『心中宵庚申(上田村、八百屋、道行思ひの短夜)』、『狐と笛吹き』である。何れも、歌舞伎に移されたものの、これまでに観たことはない。
前者は近松門左衛門の最後の世話物という。心中するのが、夫婦である点が異色である。
この演目で印象に残ったのは、「上田村の段」である。
大夫が人間国宝であり、三味線、人形が完全に一体となっていた。このため、後が霞んで感じられた。
一方、後者は作者である故北條秀司氏の十三回忌ということで、今回の演目に並んだらしい。
新作であり、現代語で語られるため分かり易い。先に演じられた『心中宵庚申(上田村、八百屋、道行思ひの短夜)』とは、雰囲気が異なるので、新たな気分で接することが出来た。
ところで、文楽へ訪れる人は、意外にイヤホンガイドを利用しない。
それだけ、慣れている人が多いのだろうか。
(第千七百四十五段)