父は子供の頃、仲間らと数人で品川や渋谷まで歩いて行ったという。昭和二十年代後半の話しである。
自伝的小説ではよく見掛ける場面である。
ということは、当時の子供はよく行なったのだろう。
察するに、冒険心と好奇心と思われる。
話しによれば、誰もお金を持っておらず、飲まず食わずで、昼食後に出掛けたのではないかとのことである。
今の子供はどうだろうか。
冒険心や好奇心は変わらないと思われるものの、まず、歩く発想自体ないに違いない。
我々の頃でさえ、渋谷なら、歩くより電車、若しくは自転車だった。
友達と遠くまで歩いた記憶はない。
大人になってみると、子供時代に、そのような経験を一度くらいしてみたかったと感じる。
物騒な世の中で、実践させ難い面があるのは否定出来ないが、仲間の良さは分かるだろう。
(第千三百三十四段)