梅の季節である。今年は昨年より忙しく、なかなか時間がなく、探梅する暇さえない。結局、合間を見ることになる。
十八日、湯島を訪れる。
自宅の庭には紅梅が植えられている。それは未だ蕾である。境内の梅も咲いているのは少なく、今年は遅いようである。寒さが影響しているのだろう。
ただ、境内を訪れる人は多い。丁度、受験が一段落したからだろう。お礼に来ている家族連れが目立つ。
現在、花といえば桜を指す。桜と比べ華やかさはないものの、梅が咲き出すと春が確実に近付いていることが分かる。
実際、江戸では福寿草同様、正月には欠かせない花である。旧暦では、丁度、今頃が正月になる。
梅が好まれたのは万葉時代で、萩と並び、詠まれた回数が多いらしい。どちらも派手さはない。その儚さが心情に合っていたのだろう。
寒空に咲く梅を眺めるのは、なかなか趣のあるものである。これを感じられる人間は少なくなってしまった。
(第九百三段)