第一京浜沿いに東禅寺に向かう。手元の地図によれば、どこからか山側に入らなければならないのだが、今ひとつはっきりしない。第一京浜は車ばかりで歩いても面白くない。そこに、桂坂が現れる。この坂を歩くのも一興と思い、上り始める。両側には、長い塀が続く。
その坂の途中に、今度は洞坂がある。狭い坂で、車は通れない。その坂を下ると、右手に塔が見える。これが東禅寺に違いない。下り終えると、山門前に出る。
ここは、江戸時代にイギリスの公使館だった場所である。小手指のとっつあんが、その頃の異人殺傷について本に纏めたことがある。なかなか生々しい写真が載っていた。今は絶版である。
山門を入ると、暫く樹木が続く。奥まで進むと、塔が目に付く。右手には鐘がある。
静かで、聞こえるのは鳥の囀りばかりである。かつて、水戸浪士が討ち入ったのが嘘のようである。尤も、その跡は残っているという。
佇んでいると、近くに住んでいるらしい親子が訪れる。見ていると、鐘を撞く。子供とっては良い思い出だろう。
(第六百四十八段)