『東都歳事記』には山吹の名所がいくつか挙げられている。それらの多くについて、今日では偲ぶしかない。
椿山荘を後にし、新江戸川公園を目指す。ここに山吹があると話しを聞いたことがある。実際、『東都歳事記』にも現在の新宿戸塚辺りが名所だったとあり、序に足を延ばしてみる。
新江戸川公園は椿山荘の近くと聞いていたものの、道に迷い、日本女子大の先まで行ってしまい、交番で確認して、漸くのことで目的地に着く。
江戸の地図ではここは細川家の屋敷で、それを利用して公園にした様子である。
園内には池があり、大名庭園だった風情が残る。ただ、期待した山吹はあまりなく、椿山荘の方が咲いていた感じがする。
そこで、ここからまた足を延ばし、甘泉園に行く。ここも、ある情報では山吹が咲くという。
この園は都電の面影橋の近くにある。ここもまた大名屋敷だったという。
入ってまず目に付くのは池である。そこに立て札があり、ここでコイヘルペスが見付かり、放流しないように警告している。池を覗けば、鯉の他に、オタマジャクシが沢山泳いでいる。こんなに見たのは子供の時以来である。
ところで、肝心の山吹はここでもあまり咲いておらず、都内において、それを見る難しさを改めて知る。
(第六百六段)