(匂い立つ楓の花や雨煙る:2015年4月9日撮影)
春のお彼岸、ぼた餅を食べ損ねた。
この時期になると、和菓子屋では、最早、並んでいない。
頭では覚えていたものの、朝早くか、仕事帰りにしか、店の前を通らないこともあり、結局、姿さえ見ていない。
店頭では、早くも、桜餅も終り、柏餅が並んでいる。
仕事帰り、偶然、地元で売れ残っているのを見付ける。味噌餡である。本来は三種類を食べたいところだが、なければ仕方がない。残りを注文すれば、「味噌餡だけです。」と店番の娘は変なことをいう。
娘とはいっても、三十過ぎくらいだ。
真意が分からず、確認すれば、漉し餡、潰し餡が人気で、東京の人間は味噌餡を敬遠するとのことだ。
思うに、柏餅における味噌餡は、独特のもので、他のふたつとは、また異なった味を楽しめる。
暫し、味噌餡談義をする。
娘も柏餅は味噌餡派とのことだ。味噌餡を注文する客を見ると、この人は分かっていると嬉しくなると話す。
(第四千二百四十二段)