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夢時世(はかなきひ)

 今年は珍しく除夜の鐘を聞きながら、新年を迎えた。甲申である。
 例年、大晦日は佐貫の酒仙と杯を傾ける。とはいっても、一緒に年越しをするわけではない。未だ、日が明るい頃から飲み出して、大抵九時前には別れてしまう。昨夜は暮れ六つには別れていた。こういう状態だから、帰宅するとつい布団に潜ってしまうことになる。それで、除夜の鐘を知らずに、新年になっているのである。
 飲む場所は毎年異なる。神楽坂、王子、四谷、故郷と様々である。これは町の散策をしてから飲むからである。大晦日に暇なことをしているといえばそうともいえる。今回はあまり縁がなかった西の方向である。場所は吉祥寺とする。
 吉祥寺には多感な時期、中学高校と六年間通ったことがある。地理的には分かっているつもりだけれど、店については自信がない。このご時世、変わっているに違いない。
 酒仙は吉祥寺をよくは知らないというので、こちらが案内人になるも、果たして知っている店はなくなっていて、見慣れない風景である。浦島状態といえる。
特に、よく昼下がり親子で将棋を指していた魚屋がたこ焼き屋になっているのを確認した時は愕然とした。ただ、表札を見ると、住人は変わっていない。魚屋だった経験を生かし、新鮮な蛸を使うことにより、生き残ろうとしたのだろうか。それとも店舗を貸したのだろうか。
 年月の流れを感じる。ふと無常を覚える。「門松は冥土の旅への一里塚」と言うが、あちこちに飾られた門松を見ていて、人の世の儚さを改めて知った次第である。
(第百七十五段)
by akasakatei | 2004-01-01 15:06 | 余暇 | Comments(0)
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