国領の世捨て人は、夜勤の職場において、四人くらいからしか、名前を呼ばれたことがないという。
ほとんどバイト扱いと変わらない。
尤も、世捨て人自体も下手に業務へ首を突っ込むと仕事が増えることもあり、存在を消しているらしい。
訊くと、ややこしい職場のようで、何かあった場合、発見者の責任にされるとのことだ。
また、間違いがあると、すぐにミス内容と名前が張り出されると聞く。
確かに、ミスは良くないものの、重要なのはその後の処理だ。
それにしても、社員同士のコミュニケーションがあれば、こうしたことは行なわれないだろう。
犯人探しをすることで、互いに疑心暗鬼になるのではないか。
何れにしても、精神的には良くない。
床には埃やゴミ、壁に張られた紙は剥がれそうになっていると話す。
こうした環境で良い仕事が出来るのか。
(第三千四百五段)