東急目黒線に乗っていたところ、如何にも専業主婦しか経験したことのなさそうなブランド品を手にした六十代のふたり組が前に立つ。話題は金持ちの子供が通うという某大学のことだ。
知人の孫がその付属高校に通っているらしく、内部進学の基準について話している。寄付が学力より優先され、何でも男子生徒は、レベルの関係で外部に進学するのがほとんどらしい。
それにしても、ちょっと離れたところに空席を見つけるや否や、込んでいる中、押し退けて行くのはどうか。意外に着飾った女性にこの類いが目立つ。
武蔵小山で下車し、東横線の学芸大学に向けて歩く。
十分ほど大通りを進み、脇道を見ると、商店街がある。その先に銭湯を見付ける。周囲は住宅街だ。
中に入ると、それほど込んでいない。ここでも、女湯からの声が聞こえる。浴場内の絵は現代的な風景だ。
銭湯を出ると、近くに手作りを掲げたパン屋がある。昔ながらのガラスケースに商品が並ぶ。
目黒通りを越え、学芸大学を目指すと、商店街の外れに魚料理と書かれた看板が立つ洋風な店がある。
この日は夏至故、日が長く、気付けば夕飯時だ。
メニューにはステーキやトルコライスもあり、むしろ、魚が食べられる方が不思議だ。
先客がおり、来る時、車内で見たような主婦だ。日帰りバス旅行に行ってきたようで、近くに座った女性が、他人の悪口ばかりで煩かったという。話す本人も似た感じで、気付かないのかと思う。
そういえば、この日、会った人で昼食は毎日面倒なので、立ち食い蕎麦という人がいた。
また、反対に夜勤をしている国領の世捨て人は外食も出来ず、休憩時間は寝る以外なく、閉塞感しかないとのことだ。今からすれば、昼食時間は重要だったとのことだ。
(第三千二百十九段)