十八時半、ピア大さん橋を交通船は出る。「交通船で行く工場夜景探検ツアー」が始まった。
船長によると、波はそれほど高くないという。
居待月が見える。
乗客は二十五人で、最近、話題となっている工場萌えの人も若干見受けられる。
横浜港より時速三十キロで、大黒ジャンクションを右手に京浜運河へと入る。
ここら辺より、速度を落とす。
運河の両脇に並ぶ工場、及び、更に毛細血管のように伸びる別の運河に面する工場を眺める。
一般的には、夜景に浮かぶ工場の灯りを楽しむものと思っていたけれど、中には、煙突より、かなり火を出している工場もある。
周囲が昼間のように明るく照らされ、まるで、怒っている感じさえする。空は、煙のため、見通しが悪い。
羽田空港が近いからか、あちこちで飛行機のランプが光っている。
一時間半のクルーズだけれど、普段、見ることが出来ない光景に、つい日常を忘れる。
(第二千六百四段)