以前、朝顔が咲いたことに触れた。
残るひと鉢も、九月半ばを過ぎ、漸く咲く。諦めていただけに、蒔いた日のことが思い出される。
四ヵ月近くも掛かる。
人も似たようなものだろう。時間が掛かって、力を発揮する人もいる。
ならば、今から始められることもあるかもしれない。己の中には、未だ気付いていない能力があるのではないか。
ただ、それは切っ掛けがなければ、知らないものである。
その切っ掛けが難しい。
好奇心を持っている人なら良いが、多くは関心事が中心である。
振り返れば、歌舞伎や落語、また花見、釣りなど、何年か前までは、楽しむなど考えたことさえなかった。
これらは、現代社会に疑問を持ち、回答への手掛かりとして、江戸を知ることから広がった。
改めて思うのは、知らないより知っておいた方が良いということである。一回でも経験すれば、そこから得るものがある。最初から拒否するのは感心しない。
(第千四百九十六段)