五合目より下り、ホテルでの昼食になる。最初、ホテル前に着くはずだったのが、首相が誰かの結婚式に出席している関係上、駐車場で下ろされる。三分ほど掛かる。
一行には、杖を突く年配者もいる。
ホテル前に行けば、人相の悪そうな体格の良い黒服らがおり、何台もの黒塗りの車が止まる。足の悪い年配者を歩かせるこれが、果たして、首相の言う美しい国かと思う。
昼食後、鳴沢氷穴に向かう。
ここでは、現地のガイドが案内する。
天然記念物で、流石に、日本人の姿も多くなる。
入る前に、説明を聞いていると、五合目での感覚がする。
急な道で、滑るため、竹の手摺りに掴まる。冷気も凄い。また目が慣れず、恐怖感が強い。狭い場所は天井が九十一センチしかなく、蟹のように進めという。
何だか、戻れないのではないかとも思う。先日、読んだ地底を舞台にした小説を思い出す。
折り返しの地獄穴では、落ちたら、絶望との案内がある。
地上に戻った時、安堵感を覚え、同時に、太腿に筋肉痛を感じる。
(第千三百七十一段)