入線してくる電車を待っていたところ、塾帰りの小学生がホームの端を走って来た。
これに関し、ホームにいる大人は勿論、駅員も何の注意もしない。
この小学生を最寄駅でまた見掛ける。
定期券を買おうと思い、自販機を操作していたところ、さっきの小学生が現れ、傍らに立つ。そこには、使い切ったパスネットを入れる箱がある。
そこを漁っており、何枚かのパスネットを手にしている。漁り終わったのに、立ち去らないで、こちらの手元を見ており、何事かと思えば、「領収書をくれませんか」という。
窓口で買っていた頃は領収書の発行など考えもしなかったけれど、今は自販機ということもあり、こういうものも手に入る。
定期券の領収書については、仕事場に提出するものでもない。
「こういうの集めているの」
少年に渡しながら訊けば、それには答えず、手にした途端走り出す。
これ以上、見知らぬ大人と関わりたくないと思ったのかもしれない。その割りには無防備な気もする。
(第千二十九段)