人気ブログランキング | 話題のタグを見る

旅本類(どうちゅうあんない)

 古本屋巡りは楽しい。最早、新刊書店には並ばなくなった書に出会える。昔の書は確りと作られており、内容もまた現代のものより面白い。
 先日も、故田山花袋氏の『改訂増補温泉めぐり』(博文館)の復刻本を見付けた。函入りのもので、そこには一円六十銭とある。これは題名の通り、全国の温泉巡りの書である。この中で、興味深いのは台湾や満州、朝鮮のそれも紹介していることである。当時の背景が分かる。この本は人気があったようで、初版に関しては二十八刷も出たらしい。
 それにしても、氏は他にも『東京近郊一日の行楽』や『京阪一日の行楽』、そして『旅の話』などを書き、現在と比べる上で、貴重な作品である。
 これらが書かれたのは大正であり、今とは異なり、交通事情は悪かったのに、よくもこれだけ旅行したものだと思う。
 『改訂増補温泉めぐり』の巻末を見ると、他の著者らによる史蹟や古蹟、湖沼についての「めぐりシリーズ」とも言うべき、案内が出ている。
 この出版社の専門なのか、旅好きが、その頃、多かったのかは知らないけれど、そこには江戸の以来の血を感じる。江戸でも旅についての本はよく出版されていた。
(第九百二十九段)
by akasakatei | 2006-03-17 21:43 | 余暇 | Comments(0)
<< 花見占(うめはおそくさくらははやい) 故郷情景童(あかさかふどきおさ... >>