多くの人間は趣味を持っている。周囲を見回しても、ない方が珍しいようである。
大学時代の友人には個性的な趣味の者が揃っている。例えば、川越の図書奉行は城めぐりである。何を訊いても、すぐに答えてくれる。噂によれば、千葉にある鼠の国の城も見に行ったらしい。
他の面々では、越生の法家は飛行機や宗教、郷土史に詳しく、また、横浜の幹事はアジア方面に強い。
年に一回、杯を傾けると、話しが様々な方面に広がり、普段、あまり知らないことなので、興味深く聞いている。
飲んでいる時、仕事の話しをしても面白くない。
趣味のある人間は、その対象に関し、自ら足を運び、文献で調べる。聞いていても、消化されているので分かり易い。
最近では、インタネットを見ただけで、分かったつもりになる人が随分といるらしい。確かに、簡単に情報は得られるかもしれないけれど、鵜呑みにしていることもあり、己の血や肉になっていないことが多い。更に、孫引きのため、少なからず間違いもある様子である。
(第九百十段)