景気が回復されているからか、それとも寒いからか、他の理由かは知らないけれど、この冬は毛皮を着ている女性が多い。それを見ていると、つい『義経千本桜』の「川連館」の狐忠信を思い出してしまう。
これだと笑い話であるものの、そうでない時もある。
昨年は、女児が殺害された事件が多く、その時、テレビのインタビューに対し、通っていた小学校の女性校長がコートを着たまま答えていた。それが毛皮であり、違和感を覚えた。
違和感といえば、最近では、初詣でも拝む場合に、上着を脱ぐ人は少ない。本来、上着は当然として、中には帽子を被ったままの者もいる始末である。
これは考えるに、怖れがないためだろう。我が国における信仰心は低く、これが礼を知らないことに結び付いている。
こうした結果、今日では傍若無人ばかりが目立つ。
全てを金銭の物差しで測り、誇りがなくなっている。
このところ、実学ばかりが持て囃されている傾向がある。確かに、生活では大切である。果たして人生ではどうか。芸術を楽しむ人は多い。反面、人文科学は聞かない。もっと、現代人はそれらを知る必要がある。
(第八百七十七段)