広島で、しゃもじかきめしの駅弁を買い、新幹線で掛川に行く。今夜の宿泊地である。都市ホテルに予約してある。
ここに宿を取ったのは、明日、大井川鐡道を訪れるためである。起点の金谷に泊れば楽なのだけれど、切符の手配を依頼した旅行会社が自信を持って紹介出来るのはここだけであった。
十二時発「のぞみ五十四号」で名古屋へ、そこから「こだま五百四十号」に乗り換え、掛川に十五時三十七分着。
掛川は城下町で、五万石だったという。予約したホテルは市街地とは反対にあり、周辺には食事が出来る店は少ない。
ホテルに荷物を置き、町を歩けば、まず、目に付くのが掛川城である。ただ、残念なことに、入れるのは十六時までである。
残念といえば、ここには故吉行淳之介氏の文学館がある。駅より多少離れており、宮城まり子さんのねむの木学園の近くである。第三の新人を愛読している者としては、是非訪れたい場所である。時間の関係で難しく、次の機会にせざるを得ない。
町はそう広くもなく、大型スーパーは目に付かない。個人の店が多い。商店街には空き店舗もある。天気は今にも降り出しそうで、寂しさが漂う。
(第八百五十段)