安楽寺の入口には蓮池があり、今の時期、季語でいう枯蓮が見られる。
冬を感じながら、常楽寺に向かう。この繋ぐ道からも町が見下ろせる。
ここは北向観音の本坊で、重要文化財の石造多宝塔がある。拝観料はここも百円である。
多宝塔までの道は鬱蒼としており、時々見える黄葉は、そのためか鮮やかである。
道を気にしながら、多宝塔へ着けば、苔生している。こうした苔を見るのは久し振りである。
この寺の隣に、別所神社がある。ここは有名ではないらしく、人影もない。立派な本殿がある。奥は開け放たれ、町が一望出来る。
駅へ戻る途中、豆腐がある。青豆を使った豆腐が売られている。豆乳を飲みながら、青豆について訊けば、減反の影響で、代わりに青豆を作るようになり、それが豆腐に使われているとのことである。
また、地元の農産物を売っている店を覗けば、むかごがある。季語では知っているものの、初めて本物を見る。
ここには里の秋が残っている。
(第八百十段)