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今日要(してんのひろがり)

本の話しの続きである。話しは出版より自伝に移る。
故郷の学級委員は、有名人以外の自伝は手に取る気にさえなれないという。訊けば、どこの馬の骨か分からぬ者については役に立たないからとのことである。
文学や民俗学などを考えると、有名人よりも歴史に残らず世を去っていった者が書いた物の方が貴重な資料である。これは意外と庶民の生活に触れているためである。
有名人のそれで資料と考えられるのは政治史である。
この場合も、臭い物には蓋をしていることが多く、一面しか見えてこない。敵側の資料と照らし合わせる必要がある。
更に、有名人の自伝について考えると、これは成功談が中心である。仮に役立てようとするならば、読むべきものは逆に失敗談ではないか。
行き詰まったために、本に助けを求めるわけだから、失敗談でなければ、役に立たないに違いない。
尤も、こうした偏った読書よりも、興味のない分野や作者にも触れるべきである。これは人生を豊かにする。そうした意味ならば、かつての人は教養があったといえるだろう。最近は、専門化され、その分、魅力のある人物が減った感がする。
(第七百三段)
by akasakatei | 2005-08-03 22:40 | 文芸 | Comments(0)
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