藤を見た後、西武新宿線の下落合に向かう。ここには薬王院がある。牡丹で有名である。
これまでにも何回か足を運んだことがある。花の時期ともなると、アマチュアのカメラマンが何人も訪れる。
境内はそう広くもないものの、その牡丹は見事であり、特に、枝垂桜が咲いている頃は、その花弁が散ることもあり、何ともいえない情景となる。東京にいることを忘れるほどである。静かな時が流れる。
残念ながら、今年は一週間ほど遅く、桜は散ってしまった。だからか、カメラを持った人が少ない。
白、赤などの大きい花が目を楽しませてくれる。
『江戸名所花暦』によれば、江戸におけるその名所は深川や東四つ木だったという。今ではなくなってしまい、江東区に牡丹の地名が残るので、それと分かるくらいである。
現在、都内で牡丹を見ようとすると、意外になく、あったとしても料金を取られる。そういう点を考えると、ここの牡丹は貴重かもしれない。
(第六百二十七段)