朝、仕事場近くの路上において、紙を丸め筒状にした棒を持った若い男に斬り込まれる。顔は、与太郎を思わせる。後ろを歩く女も斬り込まれ、男は小学校の方に向かって行く。
精神に異常があるのだろう。自ら正常という者ほど異常だ。これらに正論は通じない。
怖いのは日常生活に溶け込んでいる点だ。仕事場のお局がそうだ。
聞くところによれば、これまでに、何人も己が気に入らない者について、理由を様々に拵え、辞めさせるように仕向けているという。
こうなると、その闇の深さ故、いつ生き霊として襲って来るか分からない。
お局と仲の悪いベテランスタッフは言う。婆で独身、それに加え、外で働いているから、妖怪になる。そうでなければ、我ばかりを通し、協調性もないのに、あの年まで生きて来られるはずはないとの見解だ。
名付けて、妖怪・マブの婆と呼ぶ。尚、マブとは、マムシとハブを合わせたものである。
これだけでも、どれだけ癖の多い輩か分かるというものだ。普通は、ひとつくらい良いところがありそうだが、それもない。
(第三千八百三十七段)