冷房の効いた部屋でうたた寝をしていたら、風邪をひいてしまった。時間にして十五分くらいだったのが、もう喉が痛い。熱も出てきたようで、節々に違和感を覚える。
今夏の天候は例年とは異なり、体調維持に苦労する。早速、第六十六段に登場した仕事場近くの医者に駆け込む。先生によれば、「今、風邪は流行しています」と言う。
マスコミも大きく報道している。
昨春、桜が早く咲いたのは記憶に新しい。事実、第二十二段で千住の写真家との花見について触れたが、あれは三月の最終日曜であった。
この夏について考える。お盆休みは旧暦の七月、文月である。暦上は秋である。となると、秋の気配がしてもおかしくはないことになる。
旧暦での行事としては、施餓鬼、七夕、盂蘭盆会、吉原灯籠見物、二十六夜待ちなどがある。これらのうち、今に残るものもあるが、残ってはいても七夕のように、新暦で行なうために時期が合わなくなってしまったものや二十六夜待ちのように現在廃れてしまったものもある。民俗学的には寂しい。
何はともあれ、今回、体調を崩したのは、江戸における夏バテ防止食である鰻を土用の丑の日に、また泥鰌を食さなかったからかもしれない。
(第百二十七段)