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故郷情景友(あかさかふどきふたとせのはて)

 人の記憶ほど当てにならないものはない。
つい先日、故郷で千住の写真家と呑む約束をしていたのだが、時間があったので、図書館に寄ることにした。そこで古い資料を調べているうちに分かったことがある。
第百段で触れた、聖パウロ学園の郊外への移転時期だが、生まれてしばらくの間はどうやら未だあったようなのである。ここに訂正をする。
閑話休題。写真家との時間が迫ったので、図書館がある南青山より、小学校の前を通り、赤坂見附へと向かう。この途中でまた、記憶に関する出来事が持ち上がる。
それは小学校前でのことである。何気なく歩いていると、車道を挟んだ反対側の歩道で前から来る男がいる。その顔を見た時、一瞬、記憶の奥を探る。この男、第七十四段でクラスの旗の思い出に触れたが、その時の学級委員に似ているのである。
だが、確信はない。ふたつの理由がある。まず、かつて、彼と連絡を取ろうと思い、電話帳を調べると、それには載っていなかった。尤も、これについては外して貰っている可能性もある。もうひとつは、体型である。小学校の時は高く、最後に会った時も上背はあった。それは大学に入学した年だから、この記憶は確かである。それが、今ではそうでもない。この間、約二十年である。
人の記憶とはこれほど曖昧なものなのだったのか、と思い知らされた時だった。
(第百十一段)
by akasakatei | 2003-08-02 14:01 | 余暇 | Comments(0)
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