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京橋情(えどのぜんい)

本当に可笑しな世の中になったものである。
 京橋の路地を昼下がり歩いていたら、ひと目で日雇い労働者と分かる白い角刈りが近付いてきた。東北訛りが強く、何を言っているのかほとんど理解出来ない。 
 最後まで聞いていたら、五百円を貸してくれと言う。そこだけはどうしてか理解出来た。見知らぬ他人に貸す金は生憎持っていない。自分の生活だけで精一杯なので、当然断った。
 それにしても、何を考えているのか。ところどころ理解出来たことを繋ぐと、埼玉の熊谷より京橋まで歩いてきたが、その道中交番を筆頭に、見知らぬ人に金を無心してきたというが、誰も貸してくれないらしい。
 それが普通だろう。京橋に何の用かは知らないけれど、もっと世間を勉強する必要があるだろう。江戸では伊勢参りに行くなら一文も持たずに可能だったが、今では異なる。
 同様のことに、よく難民らへの募金を駅で集めているのがいるけれど、そうした時間があるなら、自分でバイトでもしてそれを払ったらどうか。人の情けに縋るのは、この競争社会では難しい。
 誰でも自分が一番大事であり、自己犠牲など蒙りたいものである。それは美しいことでも何でもない。
(第六十五段)
by akasakatei | 2002-12-13 12:56 | 社会心理 | Comments(0)
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