車内でのことだ。
前に立った大学生が、何やら腰を曲げる。何かと思えば、床に落ちていたピンクのスマートフォンを取り上げる。
近くの人に持ち主ではないかと問う。
結局、見付からず、次の駅で電車を降り、駅事務室に届けに行った。
こうした際、自らの下車駅に届ければ良いと思うのだが、若さ故に、気付かなかったのか。
別の日、隣りに座った五十代くらいの男性が鞄より書類を出す。
仕事関係かと思い、目を遣ると、何十人分もある履歴書であった。
それを広げ、確認をしている。プライバシーなど、関係ないようであった。
この光景で興味深いのは、年齢である。昭和六十年以前の誕生日の者が目立つ。
尚、募集しているのは、イベントスタッフで、非正規のスタッフであった。
ここでも職がないことを実感する。
(第三千二百九十五段)