十一月十四日、新橋演舞場での吉例顔見世大歌舞伎へ行く。夜の部である。
演目は、『ひらかな盛衰記(逆櫓)』、『梅の栄』、『傾城花子忍ぶの惣太都鳥廓白浪』だ。
これらのうち、観たかったのは『傾城花子忍ぶの惣太都鳥廓白浪』である。黙阿弥物だ。音羽屋が演じる。注目は「おまんまの立ち廻り」だけれど、芝居で描かれる主人公である惣太の二日間は、何と、不幸が重なったのかと思う。我が身を振り返る。
『ひらかな盛衰記(逆櫓)』は高麗屋、『梅の栄』は成駒屋である。
ところで、今回は珍しく、三階A席が取れた。
周囲を見ると、松竹歌舞伎会に入っている人が多いようで、その会報誌を手にしている。ここに入会すれば、先行販売で入手出来る。
入会していないから、いつも大衆席で観られないのだろう。
それにしても前に座っている年配の夫婦のうち夫は、身を乗り出している。これはやってはいけないことだ。
こうした行為をしていながら、その妻の隣りに座った若い女性が、妻のいない時に、偶然、鞄を折り畳まれた座席の上に乗せた時、汚れるではないかと言って、怒鳴り、何度も拭かせていた。
(第二千六百四十一段)