十月三日、新橋演舞場での錦秋十月大歌舞伎夜の部を観に行く。
演目は、『近江源氏先陣館(盛綱陣屋)』、『神楽諷雲井曲毬(どんつく)』、『艶容女舞衣(酒屋)』である。
これらのうち、『近江源氏先陣館(盛綱陣屋)』、『神楽諷雲井曲毬(どんつく)』は以前に観た。『艶容女舞衣(酒屋)』は文楽で聴いただけで、歌舞伎では観たことがない。これが目当てである。
筋書きによれば、『艶容女舞衣(酒屋)』の上演は久し振りで、平成十年以来で、東京での公演は昭和四十年代後半が最後となる。
珍しい演目で、上方の芝居である。演じるのは成駒屋だ。
「今頃は半七さん」という有名な台詞があるものの、上演があまりされていないからか、役者が慣れていない感じであった。松嶋屋以外は初役だろう。
これに対し、『近江源氏先陣館(盛綱陣屋)』は上演回数が多い。今回は、松嶋屋と成田屋が演じる。また、ひとつの場面で、我當丈、秀太郎丈、仁左衛門丈、その子供達の進之介丈、孝太郎丈らが揃って顔を合わせるのは珍しい。
『神楽諷雲井曲毬(どんつく)』は、大和屋の追善狂言である。明るい舞踊だ。幹部俳優が出演する。
(第二千六百十一段)